声をきかせて


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毎度!

お客さんから「かっつんに出会えて良かった、かっつんから話しを聞かんかったら保険に入ろうとは思わんかった」と言われ有頂天になっているかっつんです。

そんな風に言ってもらえて、めちゃくちゃ嬉しいです。ありがとうございます!

今回は、僕が感動してめちゃくちゃ泣いたお話をしたいと思います。涙腺が緩いのは老化ではありません。心が優しいからやって死んだおばあちゃんが言うてました。

これは、元教師の真由美先生が語ってくれた女の子のお話です。その女の子は、さっちゃんと言います。

目次

さっちゃん

さっちゃんは小学6年生。口がきけず、おばあちゃんと二人暮らしでした。さっちゃんが6才の時に、両親はさっちゃんをおばあちゃんに預けて蒸発してしまったそうです。

さっちゃんはそのときのショックで、おばあちゃん以外の人とは話が出来なくなってしまいました。

だから、学校でも誰に話しかけるわけでもなく、誰からも話しかけられません。まるで、さっちゃんは存在していないかのような扱いです。

常にさっちゃんは、クラスで独りぼっちだったそうです。

担任になった真由美先生は、ここでおばあちゃんに直談判に行きます。

「はじめまして、おばあちゃん。私はこのままさっちゃんが誰とも話しをせずに小学校を卒業してしまうのが嫌です。クラスのみんなにどうしてさっちゃんがお話をしなくなったのか伝えたい」

このように訴えました。するとおばあちゃんは

「それはダメだ。そんなことしたら、さちこはもっといじめられる」

と頑なに拒んだそうです。だから、それからもさっちゃんはやっぱり一人でした。

子ども達全員に居場所をつくってあげたい。子ども達が自分らしくいられる場所。そんな教室をつくってあげることが、教師のやるべき事と信じる真由美先生は再度あばあちゃんの元へ。

もう一度想いを話すと、おばあちゃんが怒りだしたそうです。

「あんた!そんなことしてさちこが余計にいじめられたら、責任とれるとね?」

おばあちゃんは心配だったのです。たった1人の孫。自分しか守れるモノがいない孫のさっちゃんが心配で心配で仕方なかった。

しかし、クラスの子ども達を信じていた真由美先生は、おばあちゃんにハッキリと言いました。

「わかった、ばあちゃん。責任は私がとるよ」

凄いですよね。責任を取るって言える覚悟があるって。こんなことを言える先生がいま何人いるんでしょうか?

変化

その後、真由美先生はさっちゃんに尋ねました。

「さっちゃんが話せなくなった理由をみんなに分かってもらいたいんだ。だからみんなに話をしてもいい?」

さっちゃんは、しっかりと目を見つめて頷いたそうです。そして、先生はクラスで話をします。

小さいときにお父さんとお母さんが突然いなくなってしまったこと。さっちゃんはそのことでとても傷ついたということ。深く傷ついて、声を出せなくなってしまったこと。

先生が話している間ずっと、教室は沈黙に包まれていました。子ども達は泣いていたそうです。

知らなかった。さっちゃんがそんなつらい思いをしていたなんて・・・。ごめんよ。さっちゃん、ごめんよ。そんな感情が心に溢れていたんじゃないでしょうか。

「さっちゃんがこのまま一言も話せないままこの学校を卒業していくのは、先生、嫌だと思ってる。だから、さっちゃんがどうしたら話せるようになるのか一緒に考えて欲しい」

そうクラスの子ども達にお願いしたそうです。

すると、クラスに変化が起こりました。子ども達が考えたのは、ペンとメモをさっちゃんに渡し、そこに自分の気持ちを書いてもらうということでした。

さっちゃんに話しをさせようとするのではなく、自分たちがさっちゃんの気持ちを理解しようと考えたんです。

誰かを変えようとするとき、僕たち大人は相手を変えようとしがちです。でも、子ども達はさっちゃんをそのまま丸ごと受け止めました。

“そのままでいいよ、さっちゃん。さっちゃんがお話しないなら、僕たちがさっちゃんに合わせるよ”

次の日、ある子の机の上に、さっちゃんのメモが貼られてました。そこには「おはよう」と書かれていました。

朝、そのメモを見つけた子どもが、さっちゃんの所に走り寄り、「さっちゃん、おはよう!」と言いました。

さっちゃんはニッコリと笑ったそうです。これが、さっちゃんが初めて友達と話しをした瞬間でした。

それから、さっちゃんのメモは増えていきます。そのうち、毎日メモに一言を書き、クラス全員の机の上に貼っていくようになりました。

卒業式

3学期が終わりに近づいた頃、さっちゃんが学校にこなくなりました。子ども達はその原因に気付いていたそうです。

「卒業式の練習が始まったからだ。名前呼ばれたら、返事せんといけんから」

そして、ある日の授業中にこんな発言が飛び出したそうです。

「先生、授業なんかやめよう。さっちゃんがどうやったら学校にくるかみんなで考えよう」

話し合いの結果、子ども達がだした答えは“さっちゃんが来られないなら、僕たちが行こう。さっちゃんに卒業式のやり方を教えよう”というモノでした。

子ども達は、いくつかのグループに分かれて何度もさっちゃんの家に通いました。歌を教えるグループ、卒業証書の受け取り方を教えるグループ。みんな一生懸命でした。

卒業式の日、さっちゃんはおばあちゃんと一緒にしっかりとした足取りでやってきました。

でも、先生の中には不安があったそうです。さっちゃんは、練習を重ねた他のクラスメート達と同じようにできるんだろうかと。

しかし、そんな心配は杞憂に終わりました。さっちゃんはみんなが起立するところで立ち、お辞儀をするところで頭を下げ、みんなが歌うところで歌っていました。(たぶん口パク?)

クラスの子ども達が教えてくれたからです。

そして、ついに卒業証書授与の時がきました。さっちゃんがステージに上がってきます。

「さちこさん」

先生が名前を呼んだそのとき、小さい小さい声でしたがはっきりと聞こえたそうです。

「はい」

という二文字が。

さっちゃんの声です。さっちゃんが声をだしてくれました。はじめて聞いた、さっちゃんの声でした。静まりかえる体育館。

すると、クラスメートの子ども達が、ぽろぽろと涙をこぼしはじめました。さっちゃんのおばあちゃんは両手で顔を覆い、ワンワン泣いていました。さっちゃんも泣いていました。

卒業式が終り教室に1人で先生がいると、さっちゃんのおばあちゃんがやってきたそうです。

「先生・・・」

いつも元気のいいおばあちゃんが静かです。

「ばあちゃん、あめでとう。さっちゃん、卒業したね。ばあちゃんよく頑張ったね」

先生がそう言うと、おばあちゃんは駆け寄って

「先生。さちこのこと、ありがとう。ありがとう」

そう何度も言ってきたそうです。最後には先生の両手を握りしめ、「先生。本当にありがとう」そう言うと、走り去っていきました。

手に何かが握られていることを感じ、先生が手を拡げるとそこにあったのは、くしゃくしゃな一万円札。

びっくりした先生は、おばあちゃんを走って追いかけ、あばあちゃんに「こんなことしたらいけんよ」って、お札を返しました。

「先生、取っといて。ばあちゃんの嬉しい気持ちを表せる方法はこんなことしか思いつかん」

あばあちゃんはそう言うと、くしゃくしゃな一万円札を再び先生に握らせると、頭を深々と下げ走っていきました。

真由美先生は、その一万円を今でも額縁に入れて飾っているそうです。

年金暮らしで孫を育てているおばあちゃんに取って、一万円札がどれだけ価値あるモノかわかりますか?

真由美先生のクラスになって、さっちゃんは学校に行くのが初めて楽しかったんじゃないでしょうか。はじめてクラスに友達が出来たんですから。

おばあちゃんに学校のこと友達のことなんかを話していたのかも知れません。それも笑顔で。

さっちゃんが楽しそうする学校の話しを聴くおばあちゃんはどれだけ嬉しかったでしょうか。そんな感謝をどうしても先生に伝えたいけれども、伝え方が分からない・・・。

だから、大事な一万円札にありったけの感謝の気持ちを込めたんと違うんかな。ばあちゃんの気持ちを考えると涙が止まりませんでした。

人は誰か1人でも愛し、信じてくれる人がいると強くなれる。人は、愛でしか変われないのかもしれないと感じたお話でした。

素敵な話しやったんで分かち合いしたくなりました。今回も最後まで読んで下さりありがとうございます。


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